ここ2年ほど、Cursor などを使って、いわゆる Vibe Coding 的な開発は継続的に試してきた。その時点でも、モックや簡単なアプリケーションを作る速度は、従来よりかなり上がっていた。
ただ、ここ半年から1年で、体感としてもう一段変わったと感じている。Claude や ChatGPT と壁打ちしながらシステムアーキテクチャを組み立てたり、Claude Code のような形で実装や周辺作業まで任せたりできるようになってから、単なるコード生成を超えて、システム開発全体の進み方そのものが変わってきた。
実装は速くなったのに、公開して見せるところで詰まる
試作ができたあと、次に必要になるのは、それを経営層に見せたり、営業の現場でクライアントに見せたりできる状態にすることだ。
ここで意外と悩ましかったのが、
- どの形で見せるのがよいか
- どこまで本番を意識した構成にするか
- 開発環境と本番環境をどう分けるか
- 運用を見据えてどの程度まで整えるか
といった、公開・環境構築・運用の入り口の部分だった。
実例:新規動画LMSシステムでは、約2人日で公開可能な状態まで持っていけた
このシステムでは、フロント/BFFに Next.js 15、LMSエンジンに Moodle、動画配信に Mux、ライブ講義に Zoom、業務DBに PostgreSQL、キュー/キャッシュに Redis、LMS側DBに MariaDB、インフラに AWS ECS Fargate + Terraform、認証に Auth.js v5 を採用した。
今回の開発では、体感として次のような速度感だった。
- モック制作:約3時間
- インフラ設計・構築:追加で約3時間
- DB接続〜E2Eテスト完了まで:約1日半
つまり、公開して見せられる状態まで、約2人日 で持っていけた。
このシステムで何ができるか
受講者向けには、トップページ、講座一覧、講座詳細、受講画面、マイページ、修了証、バッジ、プロフィール設定、イベント、コミュニティなどの導線がある。管理者向けにも、ダッシュボード、講座管理、ウェビナー管理、受講者管理、レポート、FAQ管理、バッジ管理などの機能を持つ。
全体では 18画面、40超のAPI、19テーブル、E2E 28テスト という規模感になっている。
Terraform と E2E まで LLM に任せてみると、空気が変わる
最近になって「もうここまできたら、Terraform も運用のたたき台も任せてしまっていいのではないか」と思って試してみた。すると、体感がかなり変わった。
一番大きかったのは、白紙から始めなくてよくなったことだ。Terraform のたたき台が出る。構成の雛形がすぐ作れる。「この粒度で dev 環境を切りたい」「本番ほど重くないが、後で拡張できる形にしたい」といった前提を渡せば、最初の叩き台として十分使えるものが返ってくる。
E2E テストも同様で、半年前までは難しかったものが、いまは PoC 段階の品質確認としてかなり実用域に入ってきた。
その結果、ボトルネックは実装から”公開・運用・意思決定”に移った
AI 駆動開発が進んで、モックや SaaS 的な試作が短時間で作れるようになると、以前のように「実装できるかどうか」が主要論点ではなくなる。
むしろ次に効いてくるのは、
- 何を検証したいのか
- どの状態になれば経営判断できるのか
- 誰に見せるのか
- どの品質まで持っていくのか
- どこから運用を意識するのか
といった、事業や経営に近い問いだ。
まとめ
今回の新規動画LMSシステムの例では、18画面・40超のAPI・19テーブル・外部連携・インフラ・E2Eまで含んだシステムを、約2人日で公開可能な状態まで持っていけた。
AI が速くしているのは、コード生成だけではなく、経営や営業に見せられる状態にするまでの速度であり、その結果として、経営の良し悪しが表に出る速度そのものなのだと思う。